アメリカで「カウンセリングの神様」と呼ばれ、マーシャル・ローゼンバークが師として学んだカウンセリングの大家カール・ロジャーズ (1902〜1987) は、アメリカの臨床心理学者で、現代心理学の3大潮流のうちのひとつ、第三勢力と呼ばれる「人間性心理学」の代表的な人です。
厳格なプロテスタントの両親のもとに育ち、ウィスコンシン大学で農学を学んだ彼は、後に牧師を目指してユニオン神学校大学院に進みました。ところが次第に宗教的な思想から考えを広げ、心理学へ造詣を深めるようになります。さらに他人を心理学的に援助することが仕事となり得るとも知り、ユニオン神学校大学院からコロンビア大学に転学し、臨床心理学と教育心理学を専攻しました。
ロジャーズはその後、ニューヨーク州ロチェスターにある児童虐待防止協会に就職。非行少年や恵まれない環境の子ども達のカウンセリングにも携わります。
しかし、少年達がカウンセリングを終了しても再び非行行為を繰り返す様子を目の当たりにし、それまでのカウンセリング理論に限界を感じたのです。そして、問題行動を示すとある少年とその母親のケースでの経験から、後に「来談者中心療法」と呼ばれるカウンセリング理論を打ち出しました。来訪者を「患者」と呼ぶ代わりに「クライエント」という呼称を初めて用いたのもロジャーズで、それこそがロジャーズの最大の功績といえるでしょう。
カール・ロジャースによって創始された来談者中心療法 (クライエント中心療法) は、日本には1940年代より導入されました。
来談者中心療法において人間は、本来、個人的にも社会的にも繁栄し、自分にも他人にも建設的な方向へ動いていく道を選択する存在であると考えられ、訪れた人を「壊れた、助けが必要な存在」として診るのではなく、「力のある存在」として捉えます。
「私たちは、個人的な関係、教師と学生との関係、雇用者と被雇用者との関係等、すべての対人関係の中で自由に建設的に機能する能力を、現在よりはるかに強く開放する必要がある。」
「クライアントの話をよく傾聴し、クライアント自身がどのように感じ、どのように生きつつあるかに真剣に取り組んでいきさえすれば、カウンセラーが賢明さや知識を振り回したり、押しつけたりしなくても、来談者は自ら気づき、成長していくことができる。」
そんな、カール・ロジャースの考え方を礎に、研究と臨床実践の上に「人に寄り添った平和創造へのスキルと意識」を体系化させたマーシャル・ローゼンバーグ。NVCシンガポールは、彼らの遺志を引き継いで活動をしています。